第63回全国国保地域医療学会の開催にあたって

福井県国民健康保険診療施設研究協議会 会長

萩野 正樹

(南越前町国民健康保険今庄診療所長)

この度、第63回全国国保地域医療学会を、令和5年10月6日(金)・7日(土)の2日間、アオッサ、ハピリンホールを会場に開催することとなりました。あらためて、福井県にこのような機会を与えてくださった方々に心より感謝申し上げます。

福井県の南越前町に今庄診療所という国保医療機関があります。私は、そこで医師として働いております。先日、訪問診療先で、南越前町の一部であった旧宅良村の歴史を記した本を読みました。そこに書いてあった内容は強く私を引きつけました。

旧宅良村は小さな村でした。大正時代、そこに2つの小学校がありました。小学校が2つもあるのは、効率が悪いとのことで、合併する事になりました。小学校を合併させて、新しい1つの小学校を建設する事は村民にすんなりと了解されました。しかし、どこにその新しい小学校を建てるのかということが、旧宅良村の東西で激しい争いになりました。もちろん、東地区は東地区、西地区は西地区に新しい小学校を建てたいという訳です。この争いは激烈を極めたとその本に記載されておりました。血の雨が降るとまで言われたこの争いによって、村長、助役、収入役の三役が全て辞任することとなりました。結局、宅良村では事態を収集することが出来ませんでした。ついに、福井県から職務執行者という非常に強い指揮権を有する役人が出向してくる事になってしまいました。宅良村の行く末に暗雲が垂れ込めたと記載されておりました。

小学校の校舎が、たかだか数百メートル西か東になると言うだけのためにこのような大変な争いになりました。醜い争いであったとも言えます。しかし、自分の住んでいる地区や住民に対して、当時の人はここまで思い入れと執着があったのだと私は感じました。

今はどうでしょうか?全国どこでも同じでしょうが、南越前町でも、結婚できない(しない?)男が増えて、本家であろうと、分家であろうと、何の抵抗もなく静かに消滅していきます。昔は賑やかだったけれども、今では限界集落になって久しいある集落は、とうとう高齢夫婦の二人を残すだけになりました。あと数年でその集落は間違いなく消滅するでしょう。激しい争いの末に、やっと旧宅良村で新設された宅良小学校も今となっては廃校となって久しいです。

残酷な世の中になりました。その静けさ、その執着のなさが残酷なのです。今はこの残酷さが日本のあらゆるところに広がっています。しかし、国保医療機関はあらゆる残酷さと対決するものでありたいと常に思います。

コロナ(Covid-19)も落ち着き、今年は福井の地に全国の国保医療機関の方々がつどいます。人の為になることはないか、人を救う方法はないかと知恵を絞った発表が行われます。明日の日本に希望を与える学会になります。福井県国保医療機関は、そんな意欲にあふれた皆様を大いに歓迎いたします。